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- 日本では、新規学校卒業者等の採用において、入社後一定期間を「試用期間」とし、この間に労働者の人物・能力を評価して本採用するか否かを決定する制度をとる企業が多い。
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- もっとも、新規学校卒業者等を定期採用し長期的に育成・活用する日本の「長期雇用システム」においては、(2)で記述したとおり、新規学校卒業者等の採用は慎重な選考過程を経て行われるので、試用期間中の適格性判定は念のためのものとなり、本採用拒否となることは少ない。
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- 判例では、試用期間を設けた雇用契約は、契約締結と同時に雇用の効力が確定し、ただ試用期間中は不適格であると認めたときはそれだけの理由で雇用を解約しうるという解約権留保特約のある雇用契約であるとしている。そして、当該解約権の留保は、後日における調査や観察に基づく最終決定を留保する趣旨で設定されるものと解され合理性があり、留保解約権に基づく解雇は、通常の解雇よりも広い範囲における解雇の自由が認められるとしている。
しかしながら、試用期間中の労働者が他の企業への就職機会を放棄していること等を踏まえると、留保解約権の行使は、解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存在し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許されるとしている。 - 〇
- 採用決定後における調査により、又は試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、その者を引き続き企業に雇用しておくことが適当でないと判断することが、解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に相当であると認められる場合には、留保した解約権を行使することができるとしている。
参考となる判例
【三菱樹脂事件(最大判昭和 48 年 12 月 12 日)】
【三菱樹脂事件(最大判昭和 48 年 12 月 12 日)】
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- 労働者が採用試験の際に、面接試験で虚偽の回答をしたため、企業が試用期間の満了に当たり本採用を拒否したことについて、裁判所は雇入れの拒否を認めた事案。
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- 秘匿の事実の有無、違法にわたる行為の有無等に関する事実関係に照らして、入社後における行動、態度の予測や人物評価等に及ぼす影響を検討し、企業の採否決定に有する意義と重要性を勘案し、総合的に合理的理由の有無を判断しなければならないとした。
参考となる裁判例
【日本基礎技術事件(大阪高判平成 24 年2月 10 日)】
【日本基礎技術事件(大阪高判平成 24 年2月 10 日)】
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- 技術者として採用された新規学校卒業者を、6ヶ月の試用期間を4ヶ月が経過した時点で留保解約権により解雇したことについて、裁判所は解雇を有効とした事案。
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- 原告(労働者)が起こした事故は原告や周りの者の身体生命に対する危険を有する行為であり看過できないこと、原告の時間や規則を守る意識が薄いこと、再三の注意にかかわらず睡眠不足とそれによる集中力の低下が生じていたことを総合すると、4ヶ月経過したところであるものの、今後指導を継続しても、能力を飛躍的に向上させ技術社員として必要な程度の能力を身につける見込みがない。
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- 使用者は、改善の機会を十分に与え、本採用すべく十分な指導、教育を行っていたため解雇回避の努力をしていた。
紛争を未然に防止するために
外部労働市場型の人事労務管理を行う企業において、試用期間(新規学校卒業者等を除く。)について紛争を未然に防止するために、管理職又は相当程度高度な専門職であって相応の待遇を得て即戦力として採用された労働者であり、労働者の保護に欠けることがない場合には、例えば、以下のような内容を労働契約書や就業規則に定め、それに沿った運用実態とすることが考えられる。
※ 就業規則と労働契約の整合性を図ることが必要。
外部労働市場型の人事労務管理を行う企業において、試用期間(新規学校卒業者等を除く。)について紛争を未然に防止するために、管理職又は相当程度高度な専門職であって相応の待遇を得て即戦力として採用された労働者であり、労働者の保護に欠けることがない場合には、例えば、以下のような内容を労働契約書や就業規則に定め、それに沿った運用実態とすることが考えられる。
※ 就業規則と労働契約の整合性を図ることが必要。
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- 試用期間は長期にわたらない期間(例えば、3ヶ月程度とし、労働者の同意を得て6ヶ月まで延長することができるとする)とすること。
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- 労働者が従事する職務と期待する業績等をできるだけ具体的に記載すること。
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- 試用期間終了後又は試用期間中に、業績等を判断して解雇することがあることを明記すること。
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- 試用期間中は定期的に勤務評価を行い、それを労働者に通知するとともに、業績に問題があれば、そのことを指摘すること。
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- 解雇をする場合には、予告期間を置くとともに、雇用期間その他の事情を考慮して一定の手当を支払うこと。
※ 本指針においては、裁判例の分析、参考となる裁判例に関する記述と、雇用慣行、法制度、関連情報等に関する記述とを区別しやすくするため、前者については で囲み、後者については で囲んでいる。
また、特に紛争が生じやすい項目については、紛争を未然に防止するために留意すべき点を記述している。
上述のとおり、本指針の裁判例の分析は一般的傾向を記述したものであり、個別判断においては、個々の事案毎の状況等を考慮して判断がなされる。