期間の定めのある契約(有期労働契約)は、労働者と使用者をその期間中拘束する性格のものですから、特別な事情がない限り、契約当事者の双方は一方的な理由だけで契約を解約することはできません。また、労働基準法では有期労働契約の期間について次のとおり上限を設けています。【労働基準法第14条】
期間の定めのある労働契約(有期労働契約)について、その締結時や期間の満了時における労使間のトラブルを防止するため、使用者が講ずるべき措置について、基準を定めています。
有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準
〈平成15・10・22 厚生労働省告示第357号〉 〈平成20・1・23 厚生労働省告示第12号〉 〈平成24・10・26 厚生労働省告示第551号〉 〈令和5・3・30 厚生労働省告示第114号〉
(有期労働契約の変更等に際して 更新上限を定める場合等の理由の説明) 第 1 条 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下 「有期労働契約」 という。の締結後、当該有期労働契約の変更又は更新に際して、 通算契約期間(労働契約法 第 18 条第 1 項に規定する通算契約期間をいう。 又は有期労働契約の更新回数について、上限を定め、又はこれを引き下げようとするときは 、あらかじめ、その理由を労働者に説明しなければならない。
(雇止めの予告) 第2 条 使用者は、 有期労働契約 (当該契約を 3 回以上更新し、又は雇入れの日から起算して 1 年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。次条第 2 項において同じ。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の 30 日前までに、その予告をしなければならない。
(雇止めの理由の明示) 第3 条 前条の 場合に お いて 、使用者は、労働者が更新しないこととする理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。 2 有期 労働契約が更新されなかっ た場合において、使用者は、労働者が更新しなかった理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。
(契約期間についての配慮) 第4 条 使用者は、 有期 労働契約(当該契約を 1 回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して 1 年を超えて継続勤務している者に係るものに限る。)を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならない。
(無期転換後の労働条件に関する説明) 第 5 条 使用者は、労働基準法第 15 条第 1 項の規定により、労働者に対して労働基準法施行規則第 5 条 第 5 項に規定する事項を明示する場合においては、当該事項(同条第 1 項 各号に掲げるものを除く。)に関する定めをするに当たって労働契約法第 3 条第 2 項の規定の趣旨を踏まえて就業の実態に応じて均衡を考慮した事項について、当該労働者に説明するように努めなければならない。
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有期労働契約の適正な利用のためのルールを整備するものとして、労働契約法 では、 有期労働契約
について、以下 のルールが設けられています。
Ⅰ 解約 期間中の解雇【労働契約法第 17 条第1項 】
使用者は、やむを得ない事由が な ければ、契約期間中 に 有期契約労働者を解雇できません。 「やむを得ない事由」があるか否かは、個別 の 事案に応じて判断されるものですが、契約期間は労働者及び使用者が合意により決定したものであり、遵守されるべきものであることから、「やむを得ない事由」があると認められる場合は、 無期労働契約 おける「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」以外の場合よりも狭いと解されるものです。 契約期間中であっても一定の事由により解雇することができる旨を労働者及び使用者が合意していた場合であっても、当該事由に該当することをもって 「やむを得ない事由」があると認められるものではなく、実際に行われた解雇について「やむを得ない事由」があるか否か は、 個別具体的な事案に応じて判断されるものです。 なお、有期労働契約の契約期間中に 使用者が 労働者を解雇しようとする場合には、民法第 628 条が根拠規定となるものであり、「やむを得ない事由」があるという評価を基礎付ける事実についての主張立証責任は、使用者側が負うものです。
Ⅱ 無期労働契約への転換【労働契約法第 18 条】
有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込 みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されます。 ※大学等及び研究開発法人の研究者、教員等や5年を超える一定の期間に完了することが予定されている業務に就く高度専門的知識を有する有期雇用労働者、定年後引き続いて雇用される有期雇用労働者については、それぞれ特例が設けられております。
Ⅲ 雇止め法理【労働契約法第 19 条】
最高裁判所判決で確立している雇止めに関する判例法理を規定したものです。使用者が雇止めをすることが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、雇止めは認められず、使用者は、従前の有期労働契約と同一の労働条件で労働者によ る有期労働契約の更新又は締結の申込みを承諾したものとみなされ、有期労働契約が同一の労働条件で成立することになります。
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