① 労働関係の終了
① 労働関係の終了
労働関係の終了とは、労働者が何らかの形で会社を辞め、雇用関係を消滅させることです。労働関係の終了については、特に以下の点について留意が必要です。
辞職 |
辞職は労働者による労働契約の解消です。労働者の意思表示による労働契約の解消について、期間の定めのない労働契約の場合は、労働基準法上は規定がありませんので、民法の規定によります。民法では辞職はその意思表示から2週間で効力を生じることになっています(民法第627条第1項)
期間の定めのある労働契約の場合は、労働者による解約も「やむを得ない事由」がある場合に即時解約できるに留まります(民法第628条)。
ただし、労働契約の期間が1年を超えるもの(高度の専門的知識等を有する労働者や満60歳以上の労働者との間に締結される1年を超える労働契約は除きます。)については適用されず、1年を経過した日からはいつでも退職できることとされています(労働基準法附則第137条)。
定年 |
定年制は、労働者が所定の年齢に達したときに自動的に労働契約が終了する制度です。
高年齢者雇用安定法第8条では、定年の定めをする場合には60歳を下回ることはできないとされています。また、65歳未満の定年の定めをしている事業主は、65歳までの安定的な雇用確保措置を図るために、
① 定年年齢を65歳まで引き上げ
② 65歳までの継続雇用制度の導入(特殊関係事業主(子会社・関連会社等)によるものも含む)
③ 定年の定めの廃止
のいずれかの措置をとらなければなりません(高年齢者雇用安定法第9条)。
これに加えて、70 歳未満の定年の定めをしている事業主又は70歳未満までの継続雇用制度を導入している事業主は、70歳までの就業機会を確保するため 、
① 定年年齢を70歳まで引上げ
② 70歳までの継続雇用制度の導入(他の事業主によるものも含む)
③定年の定めの廃止
④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
⑤70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入
のいずれかの措置を講じるよう努めることとされています (高年齢者雇用安定法第 10条の2 )。
解雇 |
解雇とは、使用者の一方的な意思表示により労働契約を終了させることです。
(※)解雇の事由は、就業規則で定めておくことが必要です。
<解雇の効力>
○ 期間の定めのない労働契約の場合
労働契約法第16条では、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とすると定めています。
○ 期間の定めのある労働契約の場合
労働契約法第17条第1項では、使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない、と定めています。
<整理解雇>
会社の経営悪化により、人員整理を行うための解雇です。これまでの裁判例を参考にすれば、労働組合との協議や労働者への説明を行うとともに、次のことについて慎重に検討を行うことが望まれます。
・人員削減を行う必要性
・できる限り解雇を回避するための措置を尽くすこと
・解雇対象者の選定基準が客観的・合理的であること
・解雇手続の妥当性
(※)人員削減を避けるために、労働時間の短縮(ワークシェアリングを行うことも、一つの方策です。)
(※)解雇回避のための方法としては、例えば、配置転換、出向、希望退職募集等を検討することが考えられます。
(※)解雇手続については、労働組合との協議や労働者への説明が求められます。
<懲戒解雇>
従業員が悪質な規律違反等を行ったときに懲戒処分として行う解雇です。就業規則等に具体的な種類・程度や要件を記載することが必要です。
<普通解雇>
労働者が職務を遂行できないこと理由とする解雇です。具体的には、これまでの裁判例を参考にすると、以下のような場合が該当すると考えられます。
・勤務成績が著しく悪く、指導を行っても改善の見込みがないとき
・健康上の理由で、長期にわたり職場復帰が見込めないとき
・著しく協調性に欠けるため業務に支障を生じさせ、改善の見込みがないとき
<解雇についての法令上の制限>
次の場合は法律の規定により解雇が禁止されています。
① 業務上傷病により休業する期間及びその後30日間の解雇【労働基準法第19条】
② 産前産後の休業期間及びその後30日間の解雇【労働基準法第19条】
③ 国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇【労働基準法第3条】
④ 裁量労働制を拒否したことを理由とする解雇【労働基準法第38の4条
⑤ 労働者が労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇【労働基準法第104条第2項、じん肺法第43条の2第2項、賃確法第14条第2項】
⑥ 労働組合への所属または正当な組合活動等を理由とする解雇【労働組合法第7条】
⑦ 障害者であることを理由とする解雇【障害者雇用促進法第35条】
⑧ 障害者雇用促進法上の紛争解決の援助の申出や調停の申請をしたことを理由とする解雇【障害者雇用促進法第74の6、74の7条】
⑨ 性別を理由とする解雇【男女雇用機会均等法第6条】
⑩ 女性が婚姻、妊娠、出産したこと、産前産後の休業をしたこと等を理由とする解雇【男女雇用機会均等法第9条】
⑪男女雇用機会 均等法 上の紛争解決の援助の申出や調停の申請をしたことを理由とする解雇 【男女雇用機会均等法第17条 、第18条】
⑫労働施策総合推進法 上の紛争解決の援助の申出や調停の申請をしたことを理由とする解雇( 労働施策総合推進法第 30 条の5 、第30条の6)
⑬職場におけるハラスメントの相談を行ったこと等を理由とする解雇( 男女雇用機会均等法 第 11 条 、 第 11 条の3、 労働施策総合推進法第 30 条 の 2 、 育児・介護休業法 第 25 条)
⑭雇用保険法上の確認の請求 または 高年齢被保険者の特例 の申出 をしたことを理由とする解雇【雇用保険法第 73 条】
⑮労働者 派遣法違反の事実を申告したことを理由とする解雇【 労働者 派遣法第 49条 の 3 】
⑯港湾労働法違反の事実を申告したことを理由とする解雇【港湾労働法 第 23 条で読み替えて適用する 労働者 派遣法第 49 条の 3 】
⑰建設労働法上の建設業務労働者就業機会確保事業に係る規定に違反したことの事実を申告したことを理由とする解雇【建設労働者の雇用の改善等に関する法律第44 条で読み替えて適用する 労働者 派遣法第 49 条の 3 】
⑱育児休業 、介護休業 等 の申出をしたこと又は育児休業 、介護休業等 を 取得 したこと 等、本人又は配偶者の妊娠・出産等を申し出たこと、産後パパ育休期間中の就業可能日等を申出・同意しなかったこと等を理由とする解雇【 育児・介護休業法第 10 条 、第16条 、第16条の 4 、第16条の7 、第16 条の10 、 第18条の2 、第20 条の2 、第21条第2項 、第23条の2 】
⑲育児・介護休業法上の紛争解決の援助の申出や、調停の申請をしたことを理由とする解雇 【育児・介護休業法第 52 条 の 4 、第 52 条の5 】
⑳ 通常の労働者と同視すべきパートタイム・有期雇用労働者について、パートタイム・有期雇用労働者であることを理由とする解雇【パート・有期法第9条】
㉑通常の労働者との待遇差の内容・理由等について説明を求めたことを理由とする解雇 【 パート・有期法第 14 条 第3項 】
㉒パート ・有期 法上の 紛争 解決の援助の申出や調停の申請をしたことを理由とする解雇【パート ・有期 法第24条 第 2 項 、 第25条 第 2 項 】
㉓労働者が都道府県労働局長に対して個別労働関係紛争の解決の援助を求めたこと及びあっせんを申請したことを理由とする解雇【 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律 第4条 第3項、第5条第2項 】
㉔公益通報をしたことを理由とする解雇【 公益通報者保護法第 3 条】
㉕裁判員の職務をするために休暇を取ったこと等を理由とす る解雇【 裁判員法第 100条】