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① 労働関係の終了

16 労働関係の終了等

① 労働関係の終了

 労働関係の終了とは、労働者が何らかの形で会社を辞め、雇用関係を消滅させることです。労働関係の終了については、特に以下の点について留意が必要です。

辞職

 辞職は労働者による労働契約の解消です。労働者の意思表示による労働契約の解消については、労働基準法上は規定がありませんので、民法の規定によります。民法では辞職はその意思表示から2週間で効力を生じることになっています(民法第627条)。ただし、月給制のように賃金が期間をもって定められている労働者は、次期以降について辞職することができ、当期の前半にその意思表示を行うこととされています(民法第627条第2項)。
 (例)賃金の計算期間が毎月1日~末日の月給制である労働者が、9月30日に辞職したい場合は、辞職の意思表示は9月15日までに申し入れる。

定年

 定年制は、労働者が所定の年齢に達したときに自動的に労働契約が終了する制度です。
 高年齢者雇用安定法第8条では、定年の定めをする場合には60歳を下回ることはできないとされています。また、65歳未満の定年の定めをしている事業主は、65歳までの安定的な雇用確保措置を図るために、

① 定年年齢を65歳まで引き上げ
② 65歳までの継続雇用制度の導入(希望者全員を65歳まで継続雇用する制度)
③ 定年の定めの廃止
のいずれかの措置をとらなければなりません。

解雇

 解雇とは、使用者の一方的な意思表示により労働契約を終了させることです。
(※)解雇の事由は、就業規則で定めておくことが必要です。

<解雇の効力>
○ 期間の定めのない労働契約の場合
労働契約法第16条では、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とすると定めています。
○ 期間の定めのある労働契約の場合
労働契約法第17条第1項では、使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない、と定めています。

<整理解雇>
 会社の経営悪化により、人員整理を行うための解雇です。これまでの裁判例を参考にすれば、労働組合との協議や労働者への説明を行うとともに、次のことについて慎重に検討を行うことが望まれます。

・人員削減を行う必要性
・できる限り解雇を回避するための措置を尽くすこと
・解雇対象者の選定基準が客観的・合理的であること
・解雇手続きの妥当性

(※)人員削減を避けるために、労働時間の短縮(ワークシェアリングを行うことも、一つの方策です。)
(※)解雇回避のための方法としては、例えば、配置転換、出向、希望退職募集等を検討することが考えられます。
(※)解雇手続については、労働組合との協議や労働者への説明が求められます。

<懲戒解雇>

 従業員が悪質な規律違反等を行ったときに懲戒処分として行う解雇です。就業規則等に具体的な種類・程度や要件を記載することが必要です。

<普通解雇>

 労働者が職務を遂行できないこと理由とする解雇です。具体的には、これまでの裁判例を参考にすると、以下のような場合が該当すると考えられます。

・勤務成績が著しく悪く、指導を行っても改善の見込みがないとき
・健康上の理由で、長期にわたり職場復帰が見込めないとき
・著しく協調性に欠けるため業務に支障を生じさせ、改善の見込みがないとき

<解雇についての法令上の制限>

 次の場合は法律の規定により解雇が禁止されています。

① 業務上傷病により休業する期間及びその後30日間の解雇【労働基準法第19条】
② 産前産後の休業期間及びその後30日間の解雇【労働基準法第19条】
③ 国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇【労働基準法第3条】
④ 裁量労働制を拒否したことを理由とする解雇【労働基準法第38の4条
⑤ 労働者が労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇【労働基準法第104条第2項】
⑥ 労働組合への所属または正当な組合活動等を理由とする解雇【労働組合法第7条】
⑦ 障害者雇用促進法上の紛争解決の援助の申出や調停の申請をしたことを理由とする解雇【障害者雇用促進法第74の6、74の7条】
⑧ 性別を理由とする解雇【男女雇用機会均等法第6条】
⑨ 女性が婚姻、妊娠、出産したこと、産前産後の休業をしたこと等を理由とする解雇【男女雇用機会均等法第9条】
⑩ 均等法上の紛争解決の援助の申出や調停の申請をしたことを理由とする解雇【男 女雇用機会均等法第17、18条】
⑪ 雇用保険法上の確認の請求をしたことを理由とする解雇【雇用保険法第73条】
⑫ 派遣法違反の事実を申告したことを理由とする解雇【派遣法第49の3条】
⑬ 港湾労働法違反の事実を申告したことを理由とする解雇【港湾労働法第23条で読み替えて適用する派遣法第49条の3、第44条】
⑭ 建設労働法上の建設業務労働者就業機会確保事業に係る規定に違反したことの事実を申告したことを理由とする解雇【建設労働者の雇用の改善等に関する法律第44条で読み替えて適用する派遣法第49条の3】
⑮ 育児休業、介護休業等の申出をしたこと又は育児休業、介護休業等を取得したことを理由とする解雇【育児・介護休業法第10、16、16の4、16の7、16の10、18の2、20の2、23の2条】
⑯ 育児・介護休業法上の紛争解決の援助の申出や、調停の申請をしたことを理由とする解雇【育児・介護休業法第52の4、52の5条】
⑰ パートタイム労働法上の紛争解決の援助の申出や調停の申請をしたことを理由とする解雇【パート法第24、25条】
※パート・有期法が施行される令和2年4月1日(中小企業におけるパート・有期法の適用は令和3年4月1日)からは、パート・有期法上の紛争解決の援助の申出や調停の申請をしたことを理由とする解雇(パート・有期法24②、25②)
⑱ 労働者が都道府県労働局長に対して個別労働関係紛争の解決の援助を求めたことを理由とする解雇【個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条】
⑲ 公益通報をしたことを理由とする解雇【公益通報者保護法第3条】
⑳ 裁判員の職務をするために休暇を取ったこと等を理由とする解雇【裁判員法第100条】