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Ⅰ  求人票等に記載された労働条件と実際の労働契約

第2章 採用

Ⅰ 求人票等に記載された労働条件と実際の労働契約

 求人者は、求人を申し込む際に求職者又は供給される労働者が従事すべき業務の内容と賃金、労働時間その他の労働条件を、ハローワークまたは職業紹介事業者に明示しなければなりません(職安法 5 の 3②、職安則 4 の 2)。なお、裁量労働制の求人を行う場合には、裁量労働制求人であること、適用される制度及び何時間分働いたものとみなすかについても明示する必要があります。(平成 11 年労働省告示第 141 号の第 3)

 しかし、実際に採用されて働き始めてみると、その労働条件が求人票に書かれている内容あるいは募集広告の内容とは異なっているとしてハローワークに苦情が寄せられたり、労働基準監督署に申告されたりすることがあります。こうしたトラブルは多くの場合、求人票や募集広告などの記載内容に不十分あるいは不正確な点があるのに、求人者側も応募者側もともにその点を補うか、明らかにすることなく、そのまま採用する・されることにより引き起こされることとなります。

 これに、我が国では、書面ではなく口頭で労働契約を成立させてしまうのが多いことが拍車を掛け、最終的には「言った。言わない。聞いていない。」の水掛け論になってしまうことも少なくありません。

 一般に、求人票などに記載された求人条件は、実際の労働条件と一致することが期待されるものですが、求人条件は労働契約の申込みの誘引であり、労働契約そのものではなく、その誘引に応じて応募してきた者との間で、労働条件の内容について合意があって初めて、労働契約が成立するものと解されています。

 このため、上記のとおり、求人票などには労働条件を記載すべきこととされていますが、実際に労働契約を締結する際、これとは別に、本人に対して「労働条件通知書」によるほか、就業規則を示して説明するなどして賃金、労働時間、その他の労働条件を明示することとされています(労基法 15)。

 また、平成 30 年1月1日より改正後の職業安定法の一部が施行されることに伴い、当初の労働条件に変更があった場合は、その確定後、可能な限り速やかに変更内容について明示しなければならないこととなりました(職安法 5 の 3③)。

 なお、労働契約は書面により結ばなければならないとされているわけではありません。しかし、労契法では、労働契約の内容などについて労働者の理解を深めるようにするとともに、契約の内容について、できる限り書面により確認するものとするとされており(労契法 4)、トラブルを防ぐ観点からも、書面化しておくことが望ましいことはいうまでもありません。