Ⅰ 労働時間・休憩、休日の適用除外
第6章 労働時間・休憩、休日の適用除外
Ⅰ 労働時間・休憩、休日の適用除外
「管理・監督の地位にある者」、「機密の事務を取り扱う者」又は「監視・断続的労働に従事する者」については、これまで述べてきた労働時間、休憩及び休日に関する労基法の規定は適用されないこととされています(労基法 41)。
ただし、これらの労働者についても「年次有給休暇の付与」及び「深夜業における割増賃金」については、適用除外にはなりません。
1 管理・監督の地位にある者(管理監督者)
事業の監督若しくは管理の地位にある者については、経営者と一体となって仕事をする必要があることから、労働時間などの規制は適用除外となっています。事業場で、だれが管理監督者に当たるのかは役職の名称によらず、実態をみて判断することになります。
判断の基準は、下図に示したとおりです。
「監督若しくは管理の地位にある者」の範囲については「一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものである。」とし、具体的には次の考え方によることとしています(昭22.9.13 発基 17、昭 63.3.14 基発 150)。
(1)原則
法に規定する労働時間、休憩、休日等の労働条件は、最低基準を定めたものであるから、この規制の枠を超えて労働させる場合には、法所定の割増賃金を支払うべきことは、すべての労働者に共通する基本原則であり、企業が人事管理上あるいは営業政策上の必要等から任命する職制上の役付者であればすべてが管理監督者として例外的取扱いが認められるものではないこと。
(2)適用除外の趣旨
これらの職制上の役付者のうち、労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない、重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限って管理監督者として労基法第 41 条による適用の除外が認められる趣旨であること。したがって、その範囲はその限りに、限定しなければならないものであること。
(3)実態に基づく判断
一般に、企業においては、職務の内容と権限等に応じた地位(以下「職位」という。)と、経験、能力等に基づく格付(以下「資格」という。)とによって人事管理が行われている場合があるが、管理監督者の範囲を決めるに当たっては、かかる資格及び職位の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様に着目する必要があること。
(4)待遇に対する留意
管理監督者であるか否かの判定に当たっては、上記のほか、賃金等の待遇面についても無視し得ないものであること。この場合、定期給与である基本給、役付手当等において、その地位にふさわしい待遇がなされているか、ボーナス等の一時金の支給率、その算定基礎賃金等についても役付者以外の一般労働者に比し優遇措置が講じられているか等について留意する必要があること。なお、一般労働者に比べ優遇措置が講じられているからといって、実態のない役付者が管理監督者に含まれるものではないこと。
また、管理監督者については、「名ばかり管理職」という批判の中で、日本マクドナルド事件判決(平 20.1.28 東京地裁)が社会の注目を集め、厚生労働省は、この判決を受ける形で通達(平 20.9.9 基発 0909001)を発出し、「多店舗展開する小売業、飲食業等における管理監督者の具体的な判断要素」を整理して示しています(判断要素の具体的内容は、次表のとおり。)。
2 機密の事務を取り扱う者
機密の事務を取り扱う者とは、必ずしも機密書類を取り扱う者を意味するものではなく、秘書その他その職務が経営者又は管理監督者の活動と一体不可分であって、出社、退社などについて厳格な制限を受けない者をいいます。
3 監視・断続的労働に従事する者
(1)監視労働
原則として一定の部署にあって監視するのを本来の業務とし、常態として身体又は精神的緊張の少ない労働のことをいいます。例えば、守衛などがあげられます。
(2)断続的労働
本来の業務が間歇的であるため、労働時間中においても手待時間が多く実作業時間が少ない労働のことをいいます。例えば、寮や寄宿舎の管理人や給食調理人などがあげられます。
(3)労働基準監督署長の許可
(1)と(2)の両方とも、その労働の態様が様々であり、使用者の主観的な判断に任せることは妥当ではないので、適用除外については、所轄の労働基準監督署長の許可を受けなければなりません。