Ⅱ 家族責任を負う労働者に対する保護措置
Ⅱ 家族責任を負う労働者に対する保護措置
1 育児時間
生後 1 年未満の生児を育てている女性は、通常の休憩時間のほかに、1 日 2 回それぞれ少なくとも 30 分、その生児を育てるための時間(育児時間)を請求することができ、使用者は、育児時間中その女性を使用することはできません(労基法 67)。
育児時間は、休憩時間のように「労働時間の途中に与えなければならない」ということはないので、勤務時間の始めと終わりに請求することも可能です。
育児時間を有給とするか否かは、就業規則等で定めるところによります。
2 子の看護休暇制度
小学校入学までの子を養育する労働者は、その事業主に申し出ることにより、小学校就学前の子が1人であれば年に5日まで、2人以上であれば年 10 日まで、病気・けがをした子の看護を行うため又は子に予防接種、健康診断を受けさせるために、1日単位又は半日単位で休暇を取得することができます。要件を満たす労働者からの申出があった場合、事業主は、これを拒むことはできません(育介法 16 の 2、16 の 3)。
3 介護休暇制度
要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者は、その事業主に申し出ることにより、要介護状態にある対象家族が1人であれば年に5日まで、2人以上であれば年 10 日まで、介護や、その他の世話のために、1日単位又は半日単位で休暇を取得することができます。要件を満たす労働者からの申出があった場合、事業主は、これを拒むことはできません(育介法 16 の 5、16 の 6)。
4 短時間勤務等の措置
事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者であって育児休業をしていないもの(1日の所定労働時間が6時間以下である者、日々雇用される者、労使協定により適用除外とされた者を除く。) について、所定労働時間の短縮の措置を講じなければなりません。また、その業務の性質上短時間勤務制度を講ずることが困難であると認められる業務に従事する労働者に対しては、育児休業に関する制度に準ずる措置や始業時間変更等の措置(フレックスタイム制、始業・終業時刻の繰り上げ下げ、保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与)を講じなければなりません。
事業主は、常時介護を必要とする状態にある対象家族の介護を行う労働者で介護休業をしていない者について、所定労働時間の短縮、フレックスタイム制、始業・終業時刻の繰り上げ下げ、介護費用の助成その他これに準ずる制度のうちいずれかの措置を連続する3年間以上の間に2回以上、講じなければなりません(育介法 23、育介則 74)。
5 所定外労働の制限
事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者(日々雇用される者、労使協定により除外された者を除く。)者が請求した場合は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定労働時間を超えて労働させてはいけません。制限の請求は、1 回につき、1 ヶ月以上1年以内の期間について行えます。また、この請求は何回もすることができます(育介法 16 の 8)。
事業主は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者が請求した場合においては、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定労働時間を超えて労働させてはいけません。制限の請求は、1ヶ月以上1年以内の期間について、開始の日及び終了の日を明らかにして、制限開始予定日の1ヶ月前までにする必要があります。また、この請求は何回もすることができます(育介法 16 の 9)。
6 時間外労働の制限
事業主は、小学校入学までの子を養育し、又は常時介護を必要とする状態にある対象家族の介護を行う労働者(日々雇用される者、1週間の所定労働日数が2日以下の者、同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない者を除く。)が請求した場合は、事業の正常な運営を妨げる場合を除いて1か月 24 時間、1年 150 時間を超えて時間外労働をさせてはなりません。制限の請求は 1 回につき 1 ヶ月以上1年以内の期間について行えます。また、この請求は何回もすることができます。(育介法 17、18)
7 深夜業の制限
事業主は、小学校入学までの子を養育し、又は常時介護を必要とする状態にある対象家族の介護を行う労働者のうち一定の要件を満たす者が請求した場合は、事業の正常な運営を妨げる場合を除いて深夜において労働させてはなりません。制限の請求は 1 回につき 1 ヶ月以上6ヶ月以内の期間について行えます。また、この請求は何回もすることができます。(育介法 19、20)
8 配置についての配慮
事業主は、労働者の転勤については、その育児又は介護の状況に配慮しなければなりません(育介法 26)。
配慮の内容としては、例えば、その労働者の子の養育又は家族の介護の状況を把握すること、労働者本人の意向を斟酌すること、また、就業場所の変更を行う場合は、子の養育又は家族の介護の代替手段の有無の確認を行うこと等が考えられます。
9 対象労働者等
それぞれの休業の対象となる労働者、回数、期間等の概要は、次表のとおりです。
育児関係 | 介護関係 | ||
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休業制度 | 休業の定義 | ○ 労働者が原則としてその1歳に満たない子を養育するためにする休業 | ○ 労働者がその要介護状態(負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族を介護するためにする休業 |
対象労働者 | ○労働者(日々雇用を除く) ○有期契約労働者は、申出時点において、次の要件を満たすことが必要 ・同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であること ・雇用された期間が1年未満の労働者 |
○労働者(日々雇用を除く) ○有期契約労働者は、申出時点において、次の要件を満たすことが必要 ・同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であること ・雇用された期間が1年未満の労働者 |
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対象となる家族の範囲 | ○子 | ○配偶者(事実婚を含む。以下同じ。) 父母、子、配偶者の父母祖父母、兄弟姉妹及び孫 | |
回数 | ○ 子1人につき、原則として1回(ただし、子の出生日から8週間以内にした最初の育児休業を除く。) ○ 以下の事情が生じた場合には、再度の育児休業取得が可能 ・新たな産前産後休業、育児休業又は介護休業の開始により育児休業が終了した場合で当該休業に係る子又は家族が死亡等した場合 |
○対象家族1人につき、3回 | |
期間 | ○原則として子が1歳に達するまでの連続した期間 ○ ただし、配偶者が育児休業をしているなどの場合は、子が1歳2か月に達するまで出産日と産後休業期間と育児休業期間とを合計して1年間以内の休業が可能 |
○対象家族1人につき通算 93 日まで | |
期間(延長する場合) | ○ 子が1歳に達する日において(子が1歳2か月に達するまでの育児休業が可能である場合に1歳を超えて育児休業をしている場合にはその休業終了予定日において)いずれかの親が育児休業中であり、かつ次の事情がある場合には、子が1歳6か月に達するまで可能 ・保育所等への入所を希望しているが、入所できない場合 |
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手続 | ○書面等で事業主に申出 ・事業主は、証明書類の提出を求めることができる 1歳以降の休業の申出は2週間前まで ○出産予定日前に子が出生したこと等の事由が生じた場合は、1回に限り開始予定日の繰上げ可 ○ 1か月前までに申し出ることにより、子が1歳に達するまでの期間内で1回に限り終了予定日の繰下げ可 1歳以降の休業をしている場合は、2週間前の日までに申し出ることにより、子が1歳6か月(又は2 歳)に達するまでの期間内で1回に限り終了予定日の繰下げ可 ○休業開始予定日の前日までに申し出ることにより、撤回可 ○上記撤回の場合、原則再度の申出不可 |
○書面等で事業主に申出 ・事業主は、証明書類の提出を求めることができる ○ 2週間前の日までに申し出ることにより、93 日の範囲内で、申出毎に1回に限り終了予定日の繰下げ可 ○ 休業開始予定日の前日までに申し出ることにより、撤回可 ○上記撤回の場合、再度の申出は1回のみ可 |
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子の看護休暇 | 制度の内容 | ○小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者は、1年に5日まで(当該子が2人以上の場合は 10 日まで)、病気・けがをした子の看護又は子に予防接種・健康診断を受けさせるために、休暇が取得できる ○半日(所定労働時間の2分の1)単位での取得も可能。ただし、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者及び、労使協定により、半日単位での取得が困難と認められる業務に従事する労働者は、1日単位での取得。 ○労使協定により、所定労働時間の2分の1以外の時間数を半日と定めることも可能 |
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対象労働者 | ○小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者(日々雇用を除く) ○労使協定で対象外にできる労働者 ・勤続6か月未満の労働者 |
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介護休暇 | 制度の内容 | ○ 要介護状態にある対象家族の介護その他の世話を行う労働者は、1年に5日まで(対象家族が2人以上の場合は 10 日まで)、介護その他の世話を行うために、休暇が取得できる ○ 半日(所定労働時間の2分の1)単位での取得も可能。ただし、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者及び、労使協定により、半日単位での取得が困難と認められる業務に従事する労働者は、1日単位での取得 ○労使協定により、所定労働時間の2分の1以外の時間数を半日と定めることも可能 |
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対象労働者 | ○要介護状態にある対象家族の介護その他の世話を行う労働者(日々雇用を除く) ○労使協定で対象外にできる労働者 ・勤続6か月未満の労働者 |
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所定外労働を制限する制度 | 制度の内容 | ○ 3歳に満たない子を養育する労働者がその子を養育するために請求した場合においては、事業主は所定労働時間を超えて労働させてはならない | ○ 要介護状態にある対象家族を介護する労働者がその対象家族を介護するために請求した場合においては、事業主は所定労働時間を超えて労働させてはならない |
対象労働者 | ○ 3歳に満たない子を養育する労働者(日々雇用を除く) ○労使協定で対象外にできる労働者 ・勤続1年未満の労働者 |
○ 要介護状態にある対象家族を介護する労働者(日々雇用を除く) ○労使協定で対象外にできる労働者 ・勤続1年未満の労働者 |
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期間・回数 | ○1回の請求につき1か月以上1年以内の期間 ○請求できる回数に制限なし |
○1回の請求につき1か月以上1年以内の期間 ○請求できる回数に制限なし |
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手続 | ○開始の日の1か月前までに請求 | ○開始の日の1か月前までに請求 | |
例外 | ○ 事業の正常な運営を妨げる場合は、事業主は請求を拒める | ○ 事業の正常な運営を妨げる場合は、事業主は請求を拒める | |
時間外労働を制限する制度 | 制度の内容 | ○ 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者がその子を養育するために請求した場合においては、事業主は制限時間(1か月 24 時間、1年 150 時間)を超えて労働時間を延長してはならない | ○ 要介護状態にある対象家族を介護する労働者がその対象家族を介護するために請求した場合においては、事業主は制限時間(1か月 24 時間、1年 150 時間)を超えて労働時間を延長してはならない |
対象労働者 | ○小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者 ただし、以下に該当する労働者は対象外 ・日々雇用される労働者 |
○要介護状態にある対象家族を介護する労働者ただし、以下に該当する労働者は対象外 ・日々雇用される労働者 |
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期間・回数 | ○1回の請求につき1か月以上1年以内の期間 ○請求できる回数に制限なし |
○1回の請求につき1か月以上1年以内の期間 ○請求できる回数に制限なし |
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例外 | ○ 事業の正常な運営を妨げる場合は、事業主は請求を拒める | ○ 事業の正常な運営を妨げる場合は、事業主は請求を拒める | |
手続 | ○開始の日の1か月前までに請求 | ○開始の日の1か月前までに請求 | |
深夜業を制限する制度 | 制度の内容 | ○小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者がその子を養育するために請求した場合においては、事業主は午後10 時~午前5時(「深夜」) において労働させてはならない | ○ 要介護状態にある対象家族を介護する労働者がその対象家族を介護するために請求した場合においては、事業主は午後 10 時~午前5時(「深夜」)において労働させてはならない |
対象労働者 | ○小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者 ただし、以下に該当する労働者は対象外 ・日々雇用される労働者 |
○要介護状態にある対象家族を介護する労働者ただし、以下に該当する労働者は対象外 ・日々雇用される労働者 |
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期間・回数 | ○1回の請求につき1か月以上6か月以内の期間 ○請求できる回数に制限なし |
○1回の請求につき1か月以上6か月以内の期間 ○請求できる回数に制限なし |
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手続 | ○開始の日の1か月前までに請求 | ○開始の日の1か月前までに請求 | |
例外 | ○ 事業の正常な運営を妨げる場合は、事業主は請求を拒める | ○ 事業の正常な運営を妨げる場合は、事業主は請求を拒める | |
所定労働時間の短縮措置等 | ○ 3歳に満たない子を養育する労働者(日々雇用を除く)であって育児休業をしていないもの(1日の所定労働時間が6時間以下である労働者を除く)に関して、1日の所定労働時間を原則として6時間とする措置を含む措置を講ずる義務 ただし、労使協定で以下の労働者のうち所定労働時間の短縮措置を講じないものとして定められた労働者は対象外 1 勤続1年未満の労働者 ・育児休業に関する制度に準ずる措置 |
○ 常時介護を要する対象家族を介護する労働者 (日々雇用を除く)に関して、対象家族1人につき次の措置のいずれかを、利用開始から3年以上の間で2 回以上の利用を可能とする措置を講ずる義務 ・所定労働時間を短縮する制度 1 勤続1年未満の労働者 |
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小学校就学の始期に達するまでの子を養育又は家族を介護する労働者に関する措置 | ○小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関して、育児休業に関する制度、所定外労働の制限に関する制度、所定労働時間の短縮措置又はフレックスタイム制等の措置に準じて、必要な措置を講ずる努力義務 ○小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関して、配偶者出産休暇等の育児に関する目的で利用できる休暇制度を講ずる努力義務 |
○ 家族を介護する労働者に関して、介護休業制度又は所定労働時間の短縮等の措置に準じて、その介護を必要とする期間、回数等に配慮した必要な措置を講ずる努力義務 | |
育児休業等に関するハラスメントの防止措置 | ○ 事業主は、育児休業、介護休業その他子の養育又は家族の介護に関する制度又は措置の申出・利用に関する言動により、労働者の就業環境が害されることがないよう、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講ずる義務 | ||
労働者の配置に関する配慮 | ○ 就業場所の変更を伴う配置の変更において、就業場所の変更により就業しつつ子の養育や家族の介護を行うことが困難となる労働者がいるときは、その子の養育や家族の介護の状況に配慮する義務 | ||
不利益取扱いの禁止 | ○ 育児・介護休業、子の看護休暇、介護休暇、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、所定労働時間の短縮措置等について、申出をしたこと、又は取得等を理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止 | ||
育児・介護休業等の個別周知 | ○事業主は、次の事項について、就業規則等にあらかじめ定め、周知する努力義務 ・育児休業及び介護休業中の待遇に関する事項 |