Ⅰ 性別を理由とする差別的取扱いの禁止
第11章 差別の禁止・ハラスメント対策
Ⅰ 性別を理由とする差別的取扱いの禁止
労基法では、使用者に対し、労働者が女性であることを理由として賃金について、男性と差別的取扱いをすることを禁じています(労基法4)。
また、均等法では、労働者の性別を理由として、募集・採用のみならず配置・昇進・降格・教育訓練、福利厚生、職種及び雇用形態の変更、退職の勧奨・定年・解雇・労働契約の更新について、差別的な取扱いをしてはならないと定めています(均等法5・6)。禁止される事項及び具体的事例は、次表のとおりです。
<性差別の禁止事項及びその該当事例>
禁止される事項 | 該当例 | |
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1配置 | ア 一定の職務への配置の対象から男女のいずれかを排除すること | 時間外労働等の多い職務へ男女のいずれかのみを配置すること |
イ 一定の職務への配置の条件を男女で異なるものとすること | 女性労働者のみ、婚姻、年齢、子の養育を理由として、一定の職務から除外して配置すること | |
ウ 能力・資質を判断して一定の職務へ配置する場合に、判断方法や基準を男女で異なるものとする | A の職務への配置の資格について、試験の合格基準が男女で異なる配置をすること | |
エ 一定の職務への配置に当たって、男女のいずれかを優先すること | A 部門への配置の基準を満たす労働者が複数いる場合に、男性労働者を優先して配置すること | |
オ 配置における業務の配分に当たり、男女で異なる取扱いとすること | A 部門において、男性労働者には外勤、女性労働者には内勤にのみ配置すること | |
カ 配置における権限の付与に当たり、男女で異なる取扱いとすること | 男性労働者に与えている自己の責任で買い付けることができる金額より低い金額しか女性労働者には買い付けの権限を与えないこと | |
キ 配置転換に当たり、男女で異なる取扱いとすること | 経営の合理化に際し、女性労働者のみ出向の対象とすること | |
2昇進 | ア 一定の役職への昇進の対象から、男女のいずれかを排除すること | 女性労働者についてのみ、役職への昇進の機会を与えない、または一定の役職までしか昇進できないものとすること |
イ 一定の役職への昇進の条件を男女で異なるものにすること | 女性労働者についてのみ、婚姻、年齢、子の養育を理由として昇格できない、または一定の役職までしか昇進できないものとすること | |
ウ 能力・資質を判断して一定の役職へ昇進させる場合に、判断方法や基準を男女で異なるものとすること | 男性労働者は人事考課における平均的な評価で昇進させ、女性労働者は特に優秀な評価の場合のみ昇進させること | |
エ 一定の役職への昇進に当たり、男女のいずれかを優先すること | 一定の役職への昇進基準を満たす労働者が複数いる場合に、男性労働者を優先すること | |
3降格 | ア 降格の対象を男女のいずれかのみとすること | 一定の役職の廃止に際して、男性労働者は同格の役職に配転し、女性労働者のみ降格とすること |
イ 降格の条件を男女で異なるものとすること | 女性労働者のみ、婚姻、子の養育を理由として降格の対象とすること | |
ウ 能力・資質を判断して降格させる場合に、判断方法や基準を男女で異なるものとすること | 営業成績の悪いものを降格する方針の場合、男性労働者は最低の成績の者、女性労働者は平均以下成績の者を降格の対象とすること | |
エ 男女のいずれかを優先して降格させること | 一定の役職の廃止で、降格の対象を選定するに当たり、男性労働者よりも女性労働者を優先対象として降格をさせること | |
4教育訓練 | ア 教育訓練の対象から男女のいずれかを排除すること | 一定の職務に従事する者を対象にしているにもかかわらず、男女のいずれかのみを対象として教育訓練を行うこと |
イ 教育訓練の条件を男女で異なるものとすること | 男性労働者は全員、女性労働者は希望者のみを対象とする教育訓練を行うこと | |
ウ 教育訓練の内容を男女で異なるものとすること | 期間や課程が男女で異なる教育訓練を行うこと | |
5福利厚生 | ア 福利厚生の対象から男女のいずれかを排除すること | 男性労働者のみへ社宅を貸与すること |
イ 福利厚生の条件を男女で異なるものとすること | 女性労働者のみ、婚姻を理由として社宅の貸与の対象から排除すること | |
6職種及び雇用形態の変更 | ア 職種あるいは雇用形態の変更の対象から男女のいずれかを排除すること | ①一般職から総合職への変更で男女いずれかのみ対象とすること ②有期契約労働者から正社員の変更で男女いずれかのみ対象とすること |
イ 職種あるいは雇用形態の変更の条件を男女で異なるものとすること | ①一般職から総合職変更に男女で異なる勤続年数を条件とすること ②有期契約社員から正社員への変更に男女で異なる勤続年数を条件とすること |
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ウ 能力・資質を判断して職種あるいは雇用形態を変更する場合に、判断方法や基準を男女で異なるものとすること | ①一般職から総合職への変更のための試験の合格基準を男女で異なるものにすること ③有期契約労働者から正社員への変更のための試験の合格基準を男女で異なるものにすること |
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エ 男女のいずれかを優先しての職種あるいは雇用形態の変更をすること | ①一般職から総合職への変更の基準を満たす者の中からの男女のいずれかを優先しての職種変更すること ②パートタイム労働者から正社員への変更の基準を満たす者の中から男女のいずれかを優先して雇用形態を変更すること |
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オ 職種あるいは雇用形態の変更について男女で異なる取扱いとすること | ①女性労働者についてのみ、年齢を理由として、アナウンサー等の専門職から事務職へ変更すること ③経営の合理化に際して、女性労働者のみ、正社員から有期契約社員(労働条件が劣る)へ変更を勧奨すること |
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7退職の勧奨あるいは解雇 | ア 解雇あるいは退職勧奨の対象を男女のいずれかのみとすること | 経営の合理化のため、女性労働者のみ、解雇あるいは退職勧奨すること |
イ 解雇あるいは退職勧奨の条件を男女で異なるものとすること | 経営の合理化のため、既婚の女性労働者のみ、解雇あるいは退職勧奨すること | |
ウ 能力・資質を判断して解雇退職勧奨する場合に、判断方法や基準を男女で異なるものとすること | 経営の合理化に伴い、解雇あるいは退職勧奨を実施するに当たり、人事考課を考慮する場合において、男性労働者は最低の評価の者のみ対象とするが、女性労働者は特に優秀な者以外は解雇あるいは退職勧奨の対象とすること | |
エ 男女のいずれかを優先して解雇あるいは退職勧奨すること | 男性労働者よりも優先して女性労働者を解雇あるいは退職勧奨の対象とすること | |
8定年 | 定年の定めについて男女で異なる取扱いとすること | 定年年齢の引き上げを行うに際して、厚生年金の支給開始年齢に合わせて男女で異なる定年を定めること |
9労働契約の更新 | ア 労働契約の更新の対象を男女のいずれかを排除すること | 経営の合理化に際して、男性労働者のみを労働契約更新の対象とすること |
イ 労働契約の更新の条件を男女で異なるものとすること | 経営の合理化に際して、既婚の女性労働者のみ労働契約の更新をしないこと | |
ウ 能力・資質を判断して労働契約の更新をする場合に、判断方法や基準を男女で異なるものとすること | 労働契約の更新において、男性労働者は平均的な営業成績である者、女性労働者は特に営業成績が優秀な者のみを対象とすること | |
エ 男女のいずれかを優先して労働契約の更新をすること | 労働契約の更新の基準を満たす労働者の中から、男性労働者を優先して更新の対象とすること |