Ⅲ 労働契約期間の満了等による労働関係の終了
Ⅲ 労働契約期間の満了等による労働関係の終了
1 労働契約期間の満了
(1)労働契約期間の満了による終了
労働契約に期間を定める場合は、原則として 3 年以内としなければなりません(労基法 14①)。パートタイム労働者やアルバイトなどを、契約期間を定めて雇用する場合、この範囲内で労働契約の期間を定める必要があります(労働契約の期間については 23 頁参照。)。
このように、労働契約に期間が定められている場合には、その期間が満了することによって、労使双方から何も意思表示がなくてもその労働契約は当然に終了します。
しかし、期間を定めた契約が反復して更新され、労働者が期間満了後も引き続いて同一条件で雇用されることを期待する合理的な理由があると認められる場合、その他実質的に期間の定めがない労働関係と同視できる場合には、契約期間の満了によって労働契約を終了させる(雇止め)場合であっても、②の雇止め法理が適用されます。この場合、雇止めの理由については解雇と同様に、客観的に合理性があって、社会通念上相当なものでなければなりません。
なお、契約期間の満了に際し、労働契約を更新する場合においても、その取扱いに男女間で差異を設けた場合は、均等法違反を問われることがありますので、注意が必要です(均等法 6④)。
(2)雇止め法理(労契法 19 条)
有期労働契約は契約期間の満了によって終了するものですが、契約が反復更新された後に雇止めされることによる紛争がみられるところであり、有期労働契約の更新等に関するルールをあらかじめ明らかにすることにより、雇止めに際して発生する紛争を防止し、その解決を図る必要があります。平成 24 年 8 月 10 日に施行された労契法 19 条は、最高裁判所判決で確立している雇止めに関する判例法理(いわゆる雇止め法理)を規定し、一定の場合に雇止めを認めず、有期労働契約が締結又は更新されたものとみなすこととしました。
労契法第 19 条第1号は、有期労働契約が期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していた場合には、解雇に関する法理を類推すべきであると判示した東芝柳町工場事件最高裁判決(最高裁昭和 49 年7月 22 日第一小法廷判決)の要件を規定したものです。また、法第 19 条第2号は、有期労働契約の期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合には,解雇に関する法理が類推されるものと解せられると判示した日立メディコ事件最高裁判決(最高裁昭和 61 年 12 月4日第一小法廷判決)の要件を規定したものです。
そして、労契法 19 条は、有期労働契約が反復して更新されたことにより、雇止めをすることが解雇と社会通念上同視できると認められる場合(同条第1号)、又は労働者が有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由が認められる場合(同条第2号)に、使用者が雇止めをすることが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、雇止めは認められず、したがって、使用者は、従前の有期労働契約と同一の労働条件で労働者による有期労働契約の更新又は締結の申込みを承諾したものとみなされ、有期労働契約が同一の労働条件(契約期間を含む。)で成立することとしました。
この雇止め法理の適用については、当該雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通算期間、契約期間管理の状況、雇用継続の期待をもたせる使用者の言動の有無などを総合考慮して、個々の事案ごとに判断されます。
(3)無期転換制度(労契法 18 条)
労契法第 18 条第1項は、同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間(以下「通算契約期間」という。)が5年を超える有期契約労働者が、使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、無期労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者が当該申込みを承諾したものとみなされ、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日の翌日から労務が提供される無期労働契約が成立することを規定しました。
この無期転換制度の適用は、平成 25 年 4 月 1 日以降に始期がある有期労働契約が更新等によって 5 年を超えた場合に適用されます。また、この無期転換を回避するために、無期転換申込権が発生する有期労働契約の締結以前に、無期転換申込権を行使しないことを更新の条件とする等有期契約労働者にあらかじめ無期転換申込権を放棄させることを認めることは、雇止めによって雇用を失うことを恐れる労働者に対して、使用者が無期転換申込権の放棄を強要する状況を招きかねず、労契法第 18 条の趣旨を没却するものであり、こうした有期契約労働者の意思表示は、公序良俗に反し、無効となると解されます。
2 休職期間の満了
「休職」とは、一般的には私傷病、公職に就任するなど労働者側の事情で、相当期間就労を期待できない場合に、在籍のまま一定期間その労働者の就労義務を免除する制度のことで、多くの事業場で採用されています。
就業規則等で「休職期間が満了しても復職できないときは、退職する。」旨が規定されている場合がありますが、これは一般的に定年の場合と同様、労働契約が自動的に終了する旨が定められているものと考えられますので、あらためて解雇予告などの手続きはいらないと考えられています。
しかし、休職期間の満了による労働契約の終了については、就業規則などの規定の仕方や運用などが事業場によって異なりますので、実態に即して判断する必要があります。