HOME Ⅳ 定年による労働関係の終了

Ⅳ 定年による労働関係の終了

Ⅳ 定年による労働関係の終了

 高齢法では「定年の定めをする場合には、当該定年は、60 歳を下回ることができない。」(高齢法8)としています。
また、均等法では、「定年及び解雇について、労働者の性別を理由として、差別的取扱いをしてはならない。」(均等法 6④)と定めていますので、男性 65 歳、女性 60 歳といった性によって定年年齢に差を設けることはできません。

 さらに定年(65 歳未満のものに限る。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の 65歳までの安定した雇用を確保するため、高年齢者雇用確保措置(①65 歳までの定年の引上げ、②65歳までの継続雇用制度の導入、③当該定年の定めの廃止のいずれかの措置を講じなければなりません(高齢法 9)。

 加えて、定年(65 歳以上 70 歳未満のものに限る。)の定めをしている事業主又は 70 歳未満までの継続雇用制度を導入している事業主は、その雇用する高年齢者の 65 歳から 70 歳までの就業機会を確保するため、高年齢者就業確保措置(①70 歳までの定年の引上げ、②70 歳までの継続雇用制度の導入、③当該定年の定めの廃止、④70 歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入、⑤70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入のいずれかの措置)を講ずるよう努めなければなりません(高齢法 10 の2)。

※ 高年齢者雇用確保措置・高年齢者就業確保措置の概要について

ア 高年齢者雇用確保措置の実施義務

 定年(65 歳未満の者に限る。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の 65 歳までの安定した雇用を確保するため、

  • ① 65 歳までの定年の引上げ
  • ② 65 歳までの継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入
    ※自社又は特殊関係事業主(いわゆるグループ会社)
  • ③ 当該定年の定めの廃止

のいずれかの措置を講じなければなりません。

 なお、確保されるべき雇用の形態については、必ずしも労働者の希望に合致した職種・労働条件による雇用を求めるものではなく、趣旨を踏まえたものであれば、常用雇用のみならず、短時間勤務や隔日勤務なども含めて、多様な雇用形態を含むものとされています。

イ 継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準の設定について(雇用確保措置)

 アの②の65 歳までの継続雇用制度の導入にあっては、従前は労使協定の締結によって、対象者を限定できる仕組みをとってきたところですが、平成 25 年 4 月 1 日以降は、この対象者限定基準は原則廃止されています。②の継続雇用制度を導入する場合には、希望者全員を対象とする制度とする必要があります。

 ただし、平成 25 年 3 月 31 日までに、労使協定により継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めていた場合は、経過措置として、令和7 年3月 31 日までの間、厚生年金報酬比例部分の支給開始年齢以上の者を対象に引き続き基準を利用することができます。(平成 25 年4 月以降に新たに労使協定を締結した場合には、この経過措置は利用できません。

 (参考)老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢

平成 25 年 4 月 1 日から平成 28 年 3 月 31 日まで 61 歳
平成 28 年 4 月 1 日から平成 31 年 3 月 31 日まで 62 歳
平成 31 年 4 月 1 日から令和 4 年 3 月 31 日まで 63 歳
令和 4 年 4 月 1 日から令和 7 年 3 月 31 日まで 64 歳
ウ 高年齢者就業確保措置の実施の努力義務
 定年(65 歳以上 70 歳未満のものに限る。)の定めをしている事業主又は 70 歳未満までの継続雇用制度を導入している事業主は、その雇用する高年齢者の 65 歳から 70 歳までの就業機会を確保するため、
  • ①70 歳までの定年の引上げ
  • ②70 歳までの継続雇用制度の導入
    ※自社又は特殊関係事業主、それ以外の他社を含む
  • ③当該定年の定めの廃止
  • ④70 歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  • ⑤70 歳まで継続的に社会貢献事業(事業主又は事業主が委託、出資(資金提供)等する団体
    が行うものに限る。)に従事できる制度の導入
    ※有償の(業務に従事することにより、高年齢者に金銭が支払われる)ものに限る

のいずれかの措置を講ずるよう努めなければなりません。
高年齢者就業確保措置のうちいずれの措置を講ずるかについては、労使間で十分に協議を行い、高年齢者のニーズに応じた措置が講じられることが望ましいとされています。

エ 継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準の設定について(就業確保措置)
 ウの②の 70 歳までの継続雇用制度については努力義務であるため、65 歳以上の継続雇用制度については、制度の対象者を限定する基準を設けることができます。65 歳以上の継続雇用制度において対象者基準を設ける場合、その内容については、各企業等の実情に応じ、労使間で十分に協議の上で定めることが望ましいとされています。
ただし、労使間で十分に協議の上で定められた基準であっても、事業主が恣意的に高年齢者を排除しようとするなど法の趣旨や、他の労働関係法令に反する又は公序良俗に反するものは認められません。
オ 創業支援等措置
 ウの④と⑤は雇用によらない措置であり、これらを合わせて「創業支援等措置」といいます。
創業支援等措置を講じる場合は、雇用による措置と異なり、労働関係法令が適用されません。このため、次の(1)~(3)の手続を行う必要があります。
(1) 創業支援等措置の実施(業務の内容や高年齢者に支払う金銭等)に関する計画の作成
(2) (1)の計画について過半数労働組合等の同意を得る
(3) (2)の同意が得られた計画を労働者に周知する
以上(1)~(3)の手続を経て制度を導入した後は、当該計画に沿って、個々の高年齢者と業務委託契約等または社会貢献事業に従事する契約を締結する必要があります。
カ 解雇事由等に該当する場合の取り扱い
 高年齢者はその健康状態等に個人差が生じ易く、また、従前の就業状況によっては就業継続に不適格と思われる者もいないわけではありません。そこで、高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針及び高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針において、定年に到達した高年齢者が、たとえば心身の故障のため業務に堪えられないと認められるとか、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないことといった就業規則の解雇事由又は退職事由(年齢に係るものを除く。)に該当する場合には、事業主は当該高年齢者を継続雇用しないことができるとしています。

<定年の引上げに関する規定例>

定年の引上げ

第○○条
 従業員の定年は満 60 歳とし、60 歳に達した月の末日をもって退職とする。ただし、本人が希望し、就業規則第○○条の解雇事由又は第○○条の退職事由に該当しない者については、65 歳まで継続雇用する。

希望者全員の継続雇用

第○○条

 従業員の定年は満 60 歳とし、60 歳に達した月の末日をもって退職とする。ただし、本人が希望し、就業規則に定める解雇事由又は退職事由に該当しない場合であって、労使協定の定めるところにより、次の各号に掲げる基準のいずれにも該当する者については、65 歳まで継続雇用する

  • (1)引き続き勤務することを希望している者
  • (2)過去○年間の出勤率が○%以上の者
  • (3)直近の健康診断の結果、業務遂行に問題がないこと

 この場合において、次の表の左欄に掲げる期間における当該基準の適用については、それぞれ右欄に掲げる年齢以上の者を対象に行うものとする。

平成 25 年 4 月 1 日から平成 28 年 3 月 31 日まで 61 歳
平成 28 年 4 月 1 日から平成 31 年 3 月 31 日まで 62 歳
平成 31 年 4 月 1 日から令和 4 年 3 月 31 日まで 63 歳
令和 4 年 4 月 1 日から令和 7 年 3 月 31 日まで 64 歳
トップに戻る