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Ⅰ  労働保険(労災保険及び雇用保険)

第19章 労働保険

Ⅰ 労働保険(労災保険及び雇用保険)

1 労働保険の適用

 労働者を原則として1人以上雇用している場合には、労働保険の適用事業となります。労働保険の適用事業の事業主は、保険関係が成立した日(一般的には最初に労働者を雇い入れた日)の翌日から起算して 10 日以内に所轄の労働基準監督署長又は公共職業安定所長に対して、「保険関係成立届」(所定の様式)を提出する必要があります。

 また、雇用保険に加入する場合は、「雇用保険適用事業所設置届」(10 日以内)と「雇用保険被保険者資格取得届」(翌月 10 日まで)を、保険関係成立届の事業主控の写しを添えて所轄公共職業安定所長に提出しなければなりません。

 年度途中に保険関係が成立した事業主は、保険関係の成立の日の翌日から起算して 50 日以内に、所轄の都道府県労働局、労働基準監督署又は日本銀行(代理店等)、金融機関(銀行、郵便局等)に「概算保険料申告書」(所定の様式)を添え、概算保険料を納付する必要があります。

2 保険料率

 労災保険の保険料率は事業の種類ごとに決められておりますが、具体的には厚生労働省HP(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudouhokenpoint/index.html及びhttps://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudouhokenpoint/dl/rousaihokenritu_h30.pdf)をご確認ください。また、雇用保険の保険料率の詳細は、厚生労働省HPhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000108634.htmlをご確認ください。

労働保険の保険料は実際に支払われた賃金に既定の料率を乗じて算定されます。

 なお、労働保険料の申告・納付等については、労災保険と雇用保険は、一部の事業を除き、一元的に処理されますので、別々に手続きをする必要はありません。

3 年度更新

 労働保険の適用事業の事業主は、毎年 6 月 1 日から 7 月 10 日までの間に、日本銀行(代理店等)、金融機関(銀行、郵便局等)、所轄の労働基準監督署又は都道府県労働局に「概算・確定保険料申告書」を提出して、前年度の保険料を精算し、本年度の概算保険料を納付しなければなりません。また、概算保険料が 40 万円を超える場合には、3回に分割して納付することも可能です。

4 社会保険労務士又は労働保険事務組合の利用

 労働保険の加入手続きや労働保険料の申告・納付の手続き、その他雇用保険の被保険者に関する手続きなどの労働保険の事務は、中小零細事業主にとっては負担となる場合も少なくないと思われます。このような場合には、国家資格である社会保険労務士、あるいは労働保険事務組合を利用する方法があります。

 労働保険事務組合の制度は、労働保険事務組合として厚生労働大臣から認可された事業主団体が、その構成員である事業主等の委託を受けて、労働保険料の申告・納付や各種の届出等をすることができるものです。事業協同組合、商工会議所、その他事業主団体等が多く認可されています。

 しかし、労働保険事務組合には保険給付等に関する手続き等を委託することはできませんので、これらについては社会保険労務士に委託するか、あるいは各事業場において行う必要があります。

5 適用労働者

(1)労災保険の場合

 労災保険の適用事業場の労働者であれば、パートタイム労働者、アルバイト等の呼称にかかわらずすべて労災保険が適用されます。

 したがって、労働者が仕事(業務)や通勤が原因で負傷した場合、病気になった場合、亡くなった場合等には、労働者やその遺族に対し、労災保険から必要な保険給付がなされます。この場合、たとえ事業主が労災保険の保険関係成立の手続きを怠っている場合も保険給付の対象となりますが、事業主は、保険給付に要した費用の全部又は一部を徴収されることがあります。

 なお、中小事業主や一人親方等の方も労働保険事務組合や特別加入団体を介して、労災保険の特別加入をした場合には、 補償の対象となります。詳しくは厚生労働省HP(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/kanyu.html)をご確認ください。

(2)雇用保険の場合

雇用保険の適用事業所に雇用される労働者は、正社員、準社員、パート・アルバイト等の呼称にかかわらず、次の要件のいずれにもあてはまる場合には、原則として、被保険者となります。

  • ① 31 日以上の雇用見込みがあること
  • ② 1 週間の所定労働時間が 20 時間以上であること

 雇用期間の定めがない契約の場合はもちろん、31 日未満の期間の定めのある契約であっても、雇入れの目的、同様の契約で雇用されている他の労働者の状況などからみて、契約を 31 日以上にわたり反復更新することが見込まれる場合は、この要件に該当します。

 昼間学生などは、被保険者とはなりません。

 また、取締役や監査役など会社の役員は雇用保険の被保険者とはなりません。ただし、取締役であって同時に部長などを兼務し、役員報酬より賃金の方が高く、労働者性が強いと認められる者は、あらかじめハローワークへ届け出ることによって雇用保険の被保険者となることができます。ただし、役員報酬部分は失業給付等の対象とはなりません。

6 保険給付等の種類

(1)労災保険

① 療養(補償)等給付 …… 傷病により療養するとき
② 休業(補償)等給付 …… 傷病の療養のため労働することができず、
賃金を受けられないとき
③ 障害(補償)等給付 …… 傷病が治癒(症状固定)した後に障害が残ったとき
・障害(補償)等年金 …… 障害等級第1級から第7級の場合
・障害(補償)等一時金 …… 障害等級第8級から第14級の場合
④ 遺族(補償)等給付 …… 死亡したとき
・遺族(補償)等年金 …… 死亡した人の収入で生計を維持していた遺族がいるとき
・遺族(補償)等一時金 …… 遺族(補償)年金を受け得る遺族がないとき
⑤ 葬祭料〔葬祭給付〕 …… 死亡した人の葬祭を行うとき
⑥ 傷病(補償)等年金 …… 療養開始後1年6か月を経過した日以後において
傷病が治癒(症状固定)しておらず、傷病による障害の
程度が傷病等級に該当するとき
⑦ 介護(補償)等給付 …… 一定の障害により障害(補償)年金又は傷病(補償)
年金を受給し、現に介護を受けているとき
⑧ 二次健康診断等給付 …… 労働安全衛生法に基づいて行われる直近の定期健康診断等において、
脳・心臓疾患に関連する一定の項目に異常の所見があるとき

(2)雇用保険

ア 受給資格(基本手当)

 基本手当の受給資格は、原則として離職の日以前 2 年間に 12 か月以上(賃金支払基礎日数が各月 11 日以上または、賃金支払基礎となった労働時間数が 80 時間以上)の被保険者期間が必要です。

 特定受給資格者(倒産、解雇等により離職した者)については、離職の日以前 1 年間に 6か月以上(賃金支払基礎日数が各月 11 日以上または、賃金支払基礎となった労働時間数が80 時間以上)の被保険者期間があれば、受給資格を満たすことになります。

 また、特定受給資格者に該当しない方であっても、期間の定めのある労働契約が更新されなかったこと等については、離職日の以前1年間に被保険者期間が通算して 6 か月以上あれば、受給資格の要件を満たすことになります。

イ 失業等給付

① 求職者給付

• 一般被保険者に対する求職者給付

基本手当 …… 失業した場合
技能習得手当 …… 公共職業安定所長の指示した職業訓練を受ける場合
寄宿手当 …… 上記訓練を受けるために寄宿する場合
傷病手当 …… 求職の申込みをした後に、傷病のため職業に就くことができない場合

• 高年齢被保険者に対する求職者給付(高年齢求職者給付金)

• 短期雇用特例被保険者に対する求職者給付(特例一時金)

• 日雇労働被保険者に対する求職者給付(日雇労働求職者給付金)

② 就職促進給付

・ 再就職手当 …… 受給資格者が基本手当の所定給付日数の3分の1以上を残して安定した職業に就いた場合
・ 就業促進定着手当 …… 再就職手当受給者が、再就職先に6か月以上雇用され、再就職先での6か月間の賃金が、離職前の賃金よりも低い場合
・ 就業手当 …… 受給資格者が基本手当の所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上を残して、再就職手当の支給対象とならない常用雇用等以外の形態で就業した場合
・ 常用就職支度手当 …… 障害者、45歳以上の再就職援助計画等の対象者など就職困難者が、公共職業安定所等の紹介により引き続き1年以上確実に雇用されると認められる安定した職業に就いた場合
・ 移転費 …… 公共職業安定所長の紹介した職業に就くなどのため住所を移転した場合
・ 求職活動支援費 …… 公共職業安定所長の紹介により広域にわたって求職活動を行う場合や面接に際して子どもの一時預かりを利用する場合等

③ 教育訓練給付(教育訓練給付金等)……厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講する場合

④ 雇用継続給付

[高年齢雇用継続給付]

・ 高年齢雇用継続
基本給付金
…… 60歳以上 65歳未満で、60歳時の賃金の75%未満に低下した状態で働き続ける場合
・ 高年齢再就職給付金 …… 基本手当を受けた後60歳以後に再就職し(支給残日数 100 日以上必要)、その賃金が基本手当の基準となった賃金日額を 30 倍した額と比較して75%未満になった場合

[介護休業給付]

・ 介護休業給付金 …… 対象家族を介護するため、介護休業をした場合に介護休業期間中に休業開始時賃金日額×支給日数×67%を支給。(対象家族1人につき3回、上限 93 日間)

⑤ 育児休業給付

・ 育児休業給付金 …… 1歳(保育所等における保育の実施が行われない場合などは1歳6か月又は2歳に達する日前まで、父母ともに育児休業を取得するいわゆるパパ・ママ育休プラスを取得し、一定の要件を満たす場合は1歳2か月まで)未満の子を養育するため、育児休業を取得し、一定の要件を満たす場合に、休業開始時賃金日額×支給日数×67%相当額
(育児休業開始から 181 日以降は 50%相当額)を支給(2回まで分割取得可)。
・ 出生時育児休業給付金 …… 子の出生日から8週間を経過する日の翌日までの期間内に、4週間(28 日)以内の期間を定めて、子を養育するための産後パパ育休(出生時育児休業)を取得し、一定の要件を満たす場合に、休業開始時賃金日額×休業期間の日数(28 日が上限)×67%相当額(出生時育児休業給付金が支給された日数は育児休業給付金の給付率が 67%となる日数である 180 日に通算)を支給。

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